INTERVIEW
矢島弘一さん
(脚本家、演出家、俳優)
脚本家、演出家として演劇ユニットを主宰し、またドラマなどの脚本も手がけています。
大和西高等学校では、ドリームプロジェクトの講師として、生徒の皆さんに授業を行いました。私の演劇ユニットでは社会問題などを題材にして舞台を上演することが多いのですが、差別や偏見などをテーマにしたミュージックビデオを観てもらい、感想を文章にしてもらったのです。その時のドリームプロジェクトでは、授業終了後に女優志望の女の子が相談に来てくれたことも覚えています。その子は女優という夢に対して具体的なアドバイスをくれる大人が身近におらず、脚本家の私のところへ相談に来たのだと思います。高校卒業後の進路選択は、それまでよりも自分の将来に深く関係してくるものになるだろうし、親御さんでは適切なアドバイスができない場合もあります。
先日も、知人を介して引きこもってしまった高校生の女の子と接するという機会がありました。その子は私が脚本を書いたTVドラマに感銘を受けたということで、会ってみてくれないかという話が来たわけです。私にできることは多くはないにせよ、少なくとも彼女はそうやって私まで辿り着いたわけだし、その出会いは彼女にとって少しでもプラスになるかもしれない。そう考えると、悩んでしまうような場面で手を差し伸べてくれる誰かがいることは、とても重要だと思います。特に高校生のような多感な時期には。
ちなみに私の場合、そんな誰かがいたわけではありませんが、高校時代の経験が今の仕事に役立っていると思いますね。私の高校時代、周囲の男子は皆ロックやバイクにはまっていたけれど、私はそうしたものにはまったく興味がなく、映画やテレビドラマばかり観ていました。けれども、当時たくさんの作品に触れたことが今の仕事をする上でのベースになっているし、間違いなく自分の財産になっています。もちろん好きなことを仕事にするのは簡単ではないし、特に私のような職業だと難しいかもしれません。何より、好きなことを仕事にすることが本当にいいとも言い切れないし…。それでも日々熱中できる何かを見つけて、あとは他者への思いやりをもって、高校生活を過ごしてほしいですね。きっとそうしたことは、その後の人生においてマイナスになることはないだろうから。